シラットはマレー諸島を中心に普及した自己防衛とサバイバルのための伝統武術です。
元々は中東(現在ではサウジアラビアと呼ばれる地域)にてシラットは発祥し、東南アジアの国々へ伝承されたと聞きます。
近代ではインドネシア、マレーシア、ブルネイ、シンガポールなどの国々においてシラットが行なわれ、また、タイ、フィリピン、ベトナムなどの周辺地域でも修行者の多い武術でした。
現代は欧米諸国におけるシラットの普及率が飛躍的に伸びており、アメリカやオーストラリア、ヨーロッパにて愛好者が増え続けています。
シラットには中国拳法の象形拳のように動物の動きからインスピレーションを得て創始された動作が多く含まれます。
例えば、シラット・ハリマウは虎の動きを模した、柔軟でリズミカルな動きを特徴としています。
他にもワニや猿などの動作を模した技法をシラットで行ないます。
ちなみに近代的なアーバンシラットでは肘の動作が多用され、それらは主にシラットの猿の型(モンジット)に由来するそうです。
シラットは戦争や征服だけでなく、貿易や外交を通じて外国の武術要素を取り入れることができたため、多様な文化的影響を受けて発展しました。
インドや中国の武術の影響を多分に受け、それ以外にもタイの武術や中世ヨーロッパのレスリングの技法を取り入れたと考えられる技法もシラットには含まれます。
また、逆にシラットの技法を元にして新たな武術流派を創始された例も多くあります。
ハリウッド映画の殺陣にも採用されているKEISIファイティングメソッドやdefence laboはシラットの特徴的な肘の動作を多く含んでいます。
シラットは武術だけでなく、芸能としての側面も強くなり、健康やレジャーのためのスポーツとしても人気を博しています。
結婚式の余興としてシラットが披露されることもあるそうです。
東南アジアの一部の国ではショッピングモールなどのレジャー施設でシラットの演武が行なわれることも珍しくないと聞きます。
多くの人々がシラットの練習を通じて心身を鍛え、技術を磨き、同時に文化的なつながりを深めています。
シラットの技術体系は大変に幅広く、拳を使った打突から肘、頭突き、フットトラップと呼ばれる足技、寝技、逮捕術、対武器術(刃物や鈍器の防御技術)、棒術、剣術、カランビット(半月状の武器)、サロン(腰布を使った捕縛術)などが含まれます。
余談ですが、日本武道の多くが刀の動きをベースに技術体系を組み立てているのに対し、シラットはナイフ術をベースに芸術体型を組み立てています。
それもあってシラットはナイフの届く比較的近い間合いで戦う近接戦闘に重点を置いています。
シラットはnose to nose(鼻と鼻が触れるような究極に近い間合い)でも戦うことが出来ると私はシラットの先生より教わりました。
シラットは軍隊や警察の訓練にも使用されており、実用的な自己防衛技術として高く評価されています。
その実用性からさまざまな分野での利用が広がっています。
シラットは、伝統的な価値観と現代の需要を組み合わせた総合的な武術であり、その普及と発展は続いており、今後も多くの人々にとってシラットは実用的で価値のある武術として存在し続けることでしょう。